精度の向上の為に、良い材料や高い器具を選ぶ。勿論、間違えではありません。しかし、慣れ親しんだ材料や器具は変えたくないもの。お使いのシステムを変更しないで、精度の向上を考えてみましょう。それは今お使いの印象材や周辺の器具の持っている特性を理解し、最大限に引き出してみましょう。それぞれの取扱説明書を読んで、先ずは指示通りに試してみる。そして、少しずつご自分の好みに調整して行きましょう。連合印象は小さな修正や工夫で簡単に精度が向上する方法なのです。

1. 寒天のリボイルは、極力(3回が限度)避けて下さい。
  又、長時間(15分以上)のボイルも要注意。

2. コンディショナ-は何が良いか?

現在発売されているコンディショナーには、水を使わないドライタイプ、ドライエアタイプ、水を使用するウエットタイプがあります。それぞれ長所と短所があります。それぞれの特徴をしっかりと理解して、選んで、使いこなして下さい。
コンパクトで、ウエットタイプの様に水を使わず、アルミブロックを加熱し寒天を溶解保存するので、取り扱いが簡便です。スイッチを入れ、一定時間後には使用が可能になります。但し、ウエットタイプと比較すると熱容量が小さかったり、シリンジとアルミブロックの、クリアランスの問題もあるので熱のロスが大きい。又、寒天へのストレスも大きいので、リボイル時には充分注意が必要です。

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水の熱容量が大きいので、ハイドロコロイドに優しい。それは経時変化の少なさや、印象時も冷めにくいという長所があります。但し槽内の水が汚れやすいので、こまめに掃除することが大切です。寒天に対して、最も優しいコンディショナーはウエットタイプのコンディショナーです。

ad7.jpgそれらをふまえて、どちらのコンディショナーも、定期的(月1回程度)に器材が正しく作動しているか、ボイルの温度と時間、ストレージ温度等を、実際に測定しましょう。少し乱暴なように見えますが、写真のように直接温度計をさし込みシリンジ内の寒天の温度を測定しましょう。大切なのは、寒天本体がメーカー指定の温度になっているか?です。現在、多くのメーカーから多種類が発売されています。価格やデザインで選ぶ事も大切な事ですが、温度や時間の制御が、正しく行われているかを大切に考えましょう。


3. シリンジやその他の周辺器具の事

長時間、ボイルやストレージを繰り返されるシリンジは、取り扱いに注意したい大切な道具の1つです。コンディショナー(特にドライタイプ)によっては、専用のシリンジしか使用できない機種もあります。コンディショナーは気に入っているが、シリンジが自分の手になじまないという事もあります。コンディショナーとシリンジは必ず両方試してみる事をおすすめします。

  1. 各部分のパッキンやOリングが正しく取り付けられ、正常に機能し、動きはスムーズか?
  2. 手に持った時のバランスを確認する。特にピストンが親指の付け根に、しっかりフィットするか?
  3. 長時間使用後も、変形や材質に痛みは無いか?
  4. 本体とヘッドのネジ山等は、潰れずしっかりしているか?


このような事に注意しながら、選んでみましょう。又、針のサイズは、軟めの寒天をダイナミックにフローさせて印象を採る(材料おまかせ型)先生は、太めの針(3Sや2L)を。又、硬めの寒天で丁寧に印象を採る(術者主導型)先生は、細めの針(2Sや2L)を選ぶようにして下さい。シリンジも、本数が増えると金額的な負担も大きくなります。定期的な手入れを行えば、驚く位寿命が延びます。又、ピストンの動きが鈍くて、寒天が出にくかったり、押し圧が重く感じたり、パッキンの老化で接合部から寒天が漏れ出てしまう事も防げます。


a. 洗浄
ad8.jpgできれば、月1〜2回はヘッド、ピストン、シリンダー、各部のパッキンやOリングを分解します。そして、ブラッシ等を利用して丁寧に掃除して下ださい。温湯にしばらく浸けておくのも効果的です。これは長く残って乾燥した残留寒天や掃除しきれない部分を確実に処理する為に行います。終了後、特にヘッドのニードルはエアーシリンジで残留物を、取り除いておいてください。



b. 乾燥
クロス等の上に立てて乾燥させます。一晩かけてゆっくり乾かしてください。

c. 組立て
組立て前に、パッキンやOリングに、キズや割れが無いかをチェックして下さい。見つかった場合は、新品に交換します。パッキンやOリングが手元に無い場合は、シリンジメーカーに問い合わせれば、必ずスペアーパーツを用意しているはずです。無傷でも1年を目安にするように交換しましょう。組立て時には、丁寧に各部分にワセリンを塗布します。特に、回転部分や作動部分には、薄く、広く、何回かに分けて塗布してください。

ニードルピストンヘッド筒

4. トレー

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十分な強度のある物を選んで下さい。特に、コーティング処理してある穴あきトレーが、強度的、後始末の簡便さの点で使い易いと思います。サイズは、隣接歯とのコンタクトを考えると、単冠の印象でも、3〜4歯用の局部トレーを、使用するようにしてください。隣接歯、対合歯との関係を考えて、診療するには、全顎用トレーを中心に、局部用を補助として揃えてください。



5. あると便利な小物

<温度計>

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最も手軽に購入できるのは、アルコールタイプの棒状温度計です。又、簡易型のデジタル温度計も、専門店で販売されています。常に身近に置いて、水道水、アルジネート練和水(冷水)、コンディショナーの温度等を測定し、トラブルを未然に防ぎましょう。



<ミキサー>

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各メーカーより、多くの機種が発売されています。もはや専用ミキサーでの練和は は常識です。アルジネートも石膏もメーカー指定の混水比で計量し、ミキサーで 一定の時間練和すれば、いつも均質なアルジネートペーストができます。 又、石膏の練和にも使用すれば、気泡が少なく硬い石膏泥が出来上がります。




<電子天秤>

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練る人によって、出来上がったアルジネートペーストのコンディションが一定しないことはありませんか?アルジネートに付属の計量スプーンやカップは容積で計るので、計量の度に微妙な誤差が生じます。又、計量する人によって力の入れ具合も変わってきますので水と粉の比率は変化し易いようです。理想はどなたが練っても、一定のコンディションで練れている事。コンディションが一定であれば、硬化の時間も大きくずれないようです。温度計と同様に、お求め易い価格で販売されています。


<魔法ビン>
アルジネートを練る為の水の管理には、家庭用のステンレスマグを、準備して下さい。 大きさは、1日の平均印象数で決めます。朝、冷水15〜20℃に調整(氷を1ケ入れておくと良い)しますと、最低でも半日は、大きな温度変化が無く、使用可能です。

<タイマー>
どのようなタイプでも結構です。特に寒天やアルジネートの硬化時間の目安に便利です。 又、患者さんの辛い印象時の苦痛を、不必要に長引かせる事が無くなります。 気軽に色々な場面で使ってみてください。

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